古市憲寿

禁止されることは、時に信仰を強化する。日本でも「かくれキリシタン」と呼ばれる人々が数世紀にわたり熱心に信仰を守ってきたことが有名だ。 しかし、そのかくれキリシタンも衰退の危機にあるという。信仰が伝わる長崎県の島々でも、若者は都市に出てしまい、少子高齢化が進んでいるのだ。 皮肉なのは、宗教の自由がなかった江戸時代に生きながらえた信仰が、信教の自由が担保されている現代日本で消えようとしていること。 禁止が魅力を増すといえば、マリファナも同じだろう。オランダではマリファナなどのソフトドラッグが合法だが、全く関心を示さないオランダ人も多い。マリファナに対する幻想も嫌悪もなく、数ある嗜好品の一つなのだ。日本では大麻を巡る事件が絶えないが、そもそも「禁止」が薬物の魅力を高めている可能性がある。 不況に悩む出版界も、いっそ活字禁止や、紙の出版物が禁止となったら、人はこぞって本や雑誌を読み出すのかも知れない。